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婚約成立の条件

婚約は当事者同士が将来結婚することを誠心誠意(真剣に)約束すれば有効に成立します。


【参考判例】
大審院昭和6年2月20日(抜粋)
所謂婚姻の予約なるものは結納の取交せ其の他慣習上の儀式を挙げ因て以て男女間に将来婚姻を為さんことを約したる場合に限定せらるべきものに非ずして男女が誠心誠意を以て将来に夫婦たるべき予期の下に此の契約を為し全然此の契約なき自由なる男女と一種の身分上の差異を生ずるに至りたるときは尚婚姻の予約ありと為すに妨げなきものとす
解説
これは「誠心誠意判決」と呼ばれる判例です。
要約すると、婚約は慣習上の儀式を挙げなくても、男女が誠心誠意、将来夫婦になることを約束すれば成立する、ということになります。
それまで婚約の成立には結納の取り交わしや同棲などが必要だと一般的に考えられていましたが、この判例によって、そうした形式によらず、口約束のみでも婚約として有効だということが明らかになりました。

長野地裁昭和29年6月14日(抜粋)
結納の取替わし、婚姻の挙式等は通例婚姻予約の成立した場合になされるものとしてこれを認定すべき一の徴憑たるにすぎず、これが行われなかったからといって恒に婚姻予約の成立を否定すべきではなく、当事者が真に婚姻し夫婦としての共同生活を営む意思でこれを約した事実の認められる以上は婚姻予約の成立は何ら左右されないものと解するのが相当である
解説
当事者双方に、将来本当に結婚し、夫婦として共同生活をする意思があったことを認め、婚約の有効性を認定した判例です。
同居や結納の取り交わしといった事実は、婚約成立を証明するためのひとつの材料に過ぎず、必ずしなければならないというものではないということです。

原則的には以上が婚約成立の条件であると言えます。

しかし、実際の婚約破棄トラブルでは、言った言わないの水かけ論になる場合や、「本気ではなかった」「軽いノリで言っただけ」といったように、約束が真剣なものだったのかどうかで争いになる場合がほとんどです。

そのため、裁判で婚約の有効性が争われた際、婚約成立を主張する側はその条件が満たされていることを立証しなければなりません。


【婚約成立の条件】

  1. 当事者同士の明確な合意があること
  2. 合意が誠心誠意なされたものであること

条件1に関しては客観的な事柄なのでわかりやすいと思います。
しかし、条件2のような主観的な事柄(心の中の問題)を裁判所がどのように判断しているかについては、もう少し説明をする必要があるでしょう。

合意が誠心誠意なされたものであるかどうかの判断は以下のような基準にそって行われています。

【条件2を判断するための客観的事実】

  1. 家族や友人などの第三者に結婚することを公表した
  2. 結婚の準備を具体的に進めていた
  3. 婚約指輪の授受
  4. 結納を行った
  5. 継続的な性的関係があった【参考判例】

裁判所はこうした事情を総合的に考慮して婚約の成立を認定しています。

つまり、婚約は原則、口約束のみで成立しますが、その有効性が争われた場合は、真剣に約束したのだということがよくわかるような客観的事実があったほうが有利だということです。


【参考判例】
最高裁昭和38年9月5日(抜粋)
原告と被告は原告主張の如く同棲同様の生活を続けていたわけではなく、(中略)二人の関係をその両親等に積極的には打明けようとせず、且それが故に結納の授受等世間の慣習に従う手続をとること等は勿論双方の両親の間で二人の結婚について話し合う機会をもつこともなかったことが認められるけれども、(中略)男女が真剣に将来夫婦としての共同生活を営むことを約し、これに基いて長期間継続的に情交関係を結ぶに至ったこと自体婚姻予約についての当事者双方の明確な意思を看取するに足るものというべきである。
解説
二人は同棲もしておらず、両親に二人の関係を打ち明けてもいませんでした。しかし裁判所は、男女が真剣に将来を約束し、それに基づいて継続的な性的関係をもつにいたったという事実から、婚約の明確な意思が読み取れると判断しました。

婚約の成立が認められないケース

同棲の事実や継続的な性的関係があっても、上記の条件1(明確な合意)が満たされていない場合、婚約は成立しません。

また、条件1が満たされていても、その合意が真剣味に欠けるものであったり、一方が性的関係を継続するために表面上、約束をしていただけであったりする場合は、無効と判断される可能性があります。

なお、公序良俗に反する婚約は言うまでもなく無効です。


【参考判例】
大阪地裁昭和26年5月15日(抜粋)
被告の誘うまま前記の旅館において情交関係を結ぶに至り、前後六七回に亘ってその関係を継続したものであるが、その相互の将来について語り合ったのは、ただ第二回目の関係の前に被告が前記旅館で「親が反対しても一緒になる」と言い、原告もまた「一緒になろう」と話したことがあるだけで、その他には第一回の関係に至るまでの間にも、また第二回の関係以後にも全然何等の話合をもしたことはないのであって、(中略)原被告の言は所謂閨房の睦言の類を出でず、相互間真剣に将来婚姻に至るべきことを約し合ったものとは認めることはできないのであって、所詮原被告の関係は単純なる双方合意の情交関係に過ぎなかったものであり
解説
男女が性交渉をする前後に一度だけ将来を約束しただけでは、婚約の成立は認められないという判例です。
こうした状況での婚約は「閨房の睦言」、つまりベッドルームでの男女の語らいに過ぎず、真剣な約束とは言えないというわけです。

東京地裁昭和40年4月28日(抜粋)
被告Y1は原告に対し結婚の申込をして原告と情交関係を結びその後も常に将来結婚する旨述べ且つその意思を明らかにするような行動をもとって原告の歓心をかいながら情交関係を継続していたことは明らかであるけれども、他方被告Y1は当初から原告と結婚する意思を有せず、さりとて原告との情交関係を断絶することにも未練が残り、原告からの結婚の要求に対し、その意思とはうらはらに将来結婚する旨述べ、(中略)よって原告と被告Y1間の婚姻予約の成立を前提とする原告の被告等五名に対する第一次請求はいずれもその余の点について判断するまでもなく失当である
解説
男性が女性と結婚するつもりもないのに、女性の気を引くために将来結婚する旨を繰り返し述べていたという事例です。
継続的な性的関係があり、表面的に将来結婚する合意ができていても、男性側に初めから結婚する意思がなかったために、婚約そのものの成立が認められませんでした。したがって、婚約破棄に対する女性の慰謝料請求も棄却されました。
ただ、女性は予備的に不法行為に基づく慰謝料請求もしており、こちらは男性が女性の貞操を侵害したとして、その責任が認められました。女性をだまして性的関係を続けたわけですから当然と言えるでしょう。

大審院大正9年5月28日(要旨)
甲に配偶者乙あることを知れる丙が将来甲乙間の婚姻解消したる場合に於て甲丙が互に婚姻を為すべき旨を予約するが如きは善良の風俗に反する事項を目的とする無効の法律行為なりと解するを相当とす
解説
要するに、相手の男性に奥さんがいることを知りながら、「将来、奥さんと離婚したら私と結婚してください」と言って結婚の約束をしても、それは公序良俗に反するので無効になりますよ、という判例です。



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